日本型の賞与ではモチベーションは上がらない?

給与設計学

日本型の賞与ではモチベーションは上がらない?

私の経験から言えることを整理してみます。まず、給与と賞与の違いを明確にしておく必要があります。

給与については私がいう「給与設計」でも、一般に言う「給料」でも、労働の対価として、法律で明確に規定しています。

問題は賞与ですが、従業員(労働組合)からみた「一時金」は、生活に必要な賃金の一部であり、「権利」であるといいます。

労働基準法では、あくまで臨時の賃金等と扱われ、賞与制度があれば、就業規則に必ず記載するように求めています。

ただし、支給条件と支給時期の記載だけでよく、支給金額については、それは求めていません。

つまり、法律では、賞与は会社の業績によって変動するものと認識し、労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものと定義されています。

要するに会社には、本来賞与の支払い義務はないということです。

面白いのは、労働者の「勤務成績」に応じてと言っていることです。

あくまで勤務成績であって成果ではないはずです。

本来の賞与とは何でしょうか?

欧米では「良い」という意味を語源とするボーナスがあります。

これは会社の特別配当の意味です。

一般に一定水準以上の業績を上げた場合に支給されるものです。

これに対して、日本の「賞与」の語源は功労に対する褒美の金品、賞を与えることです。

この語源の違いからみてもわかるように、我が国の賞与は業績による成果の分配というよりは、勤務成績といった経営者や上司に対しての真面目で誠実な勤務態度の褒美という性格です。

とすれば、そもそも仕事に対する目的が欧米の考え方とは違ったものなのです。

従って当然のように、
一生懸命に頑張った仕事は、会社の業績や成果に関係なく褒美である賞与を与えられるのは当たり前になるのです。

従業員にしてみれば、経営者の言う通りに誠実で、真面目に、一生懸命に頑張ったのに賞与が下がってしまった。

頭では理解できても、「不満足要因」は増幅してしまうのです。

そのことを経営者は理解しているのかいないのか、

「こんなに会社が大変な時でも賞与を出したのだから、きっと分かってくれるはずだ」

と勝手に思い込んでいるのです。

賞与が、モチベーション(やる気)の向上のインセンティブ(外部刺激)になるためには、

当たり前の慣習になってしまった日本型の賞与では駄目なのです。

ご褒美であれば尚更です。

予想もできないサプライズでなければインセンティブ(外部刺激)にはならないということです。

「思いもよらずに」とか「期待してないのに」という場面でないとモチベーション(やる気)の向上には結び付きません。

「これを達成したらこのようになる」

というご褒美であれば、ハーズバーグの言う「動機付け要因」となりえます。

そのためには、基準が明確でなければなりません。これが欧米の特別配当の考え方です。

今のような日本の賞与の考え方や支給の仕方では、決して従業員の「やる気」には結び付かないでしょう。

賞与で「やる気」を引き出すためには、支給基準を明確にし、

なぜこの金額になるかを説明でき、加えて従業員らが、どうすればいくら支給されるかが分かるようにしなければなりません。

それが、やる気に結び付く本来の賞与なのです。

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