
「社長、私は今のまま現場にいたいです。昇進はしたくありません」
期待していた30代の中堅社員から、面談の席でそう告げられたとしたら。
あなたは彼の言葉にどう返しますか?
「何を弱気なことを言っているんだ」
「責任ある立場になってこそ一人前だぞ」……
そんな言葉を飲み込んだのなら、正解です。
なぜなら、彼が昇進を拒む理由は
「やる気」の問題ではなく、あなたの会社の
組織構造と給与設計の「バグ」にあるからです。
社員数が30名を超えてくると、社長一人の目配りでは
現場は回りません。
そこで「中間管理職」というリーダー層を置くことになりますが、
多くの中小企業、特に現場仕事の多い建設業などでは、
このリーダー層が最も過酷な「罰ゲーム」を強いられています。
2026年、労働人口が激減し、社会保険料の負担が増大する今、
組織を維持するために必要なのは根性論ではありません。
リーダーが「この役割を引き受けて本当によかった」と確信できる、
科学的な評価と給与設計の再構築です。
1.なぜリーダーは「罰ゲーム」だと
感じるのか?
まず、経営者が直視しなければならないのは、
今のリーダー層が置かれている「三重苦」の現実です。
① プレイングマネージャーという「地獄」
30名規模の会社では、リーダーは「管理だけ」をしているわけには
いきません。
誰よりも高いスキルを持ち、誰よりも稼ぐ「トッププレイヤー」
であることを求められます。
その上で、部下のミスを回収し、トラブル対応に走り、
社長の意図を現場に翻訳して伝える。
彼らの1日は、自分の現場を回すことで精一杯になり、
部下の相談に乗る時間は「本来の業務が終わった後のサービス残業」
へと消えていきます。
② 「残業代逆転」という残酷な数字
これが最もリーダーを絶望させる要因です。
一般社員であれば現場の残業代が全額支給されるのに対し、
リーダーになった途端「役職手当(月3万円程度)」という名目で、
残業代が実質的にカットされるケースが後を絶ちません。
結果として、
「責任が重く、拘束時間が長いリーダーよりも、現場で 手を動かして
残業代をもらっている若手の方が、手取り額が多い」
というねじれ現象が起きます。
これを目にしている若手社員が、
「次は自分の番だ」と希望を持てるはずがありません。
③ 175万円の壁と「責任のデフレ」
2026年、年収の壁が175万円へと引き上げられる議論が進み、
パートやアルバイトの時給は年々上昇しています。
一方で、責任ある立場にいるリーダーの基本給が据え置かれていれば、
「責任の重さに対する報酬(責任の単価)」は相対的に下がっている
ことになります。
「これだけのストレスを抱えて、手取りがバイトの倍にもならないのか」
という冷めた視線が、リーダーの心から熱を奪っていきます。
2.リーダーを救う「評価基準」のパラダイムシフト
では、どうすれば良いのか。
まずは「何を評価するか」という
基準そのものを変える必要があります。
これまでは「現場でいくら稼いだか(売上・粗利)」が
最大の評価軸だったはずです。
しかし、リーダー層には、以下の3つの指標を組み込むべきです。
① 「育成」というアウトプットを数値化する
「あいつは面倒見がいい」という感覚的な評価はもうやめましょう。
「担当チームから、次のリーダー候補が何人育ったか」
「部下の資格取得率がどれだけ向上したか」
を、給与に直結する評価項目に明文化します。
② 「トラブル未然防止」を評価する
トラブルを華麗に解決するリーダーは目立ちますが、
本当に優秀なのは「トラブルを起こさない」リーダーです。
工期の遅延、安全事故の発生率、そして「部下の離職率」を
評価指標に入れることで、リーダーは「火消し」ではなく
「火をつけない仕組み作り」にエネルギーを割くようになります。
③ 「ポータブルスキル」の習得
2026年の若手は、その会社でしか通用しない肩書きには
興味がありません。
マネジメント能力、原価管理能力、デジタルツール(AI等)
を駆使した生産性向上など、「どこへ行っても食っていけるスキル」
を会社が定義し、その習得度を評価する。
これにより、管理職になることが「自己投資」になるという
文脈を作ります。
3.「管理職を罰ゲームにしない」ための
給与設計・3つの具体案
評価基準を変えたら、次はそれを「数字」に落とし込みます。
ここが曖昧だと、社員の信頼は勝ち取れません。
① 「役職手当」から「役割給+マネジメントインセンティブ」へ
固定の「役職手当」は、どんなに苦労しても、逆にサボっていても
一定です。これを以下の二階建てに変更します。
役割給(固定): その役職の責任の重さに対して支払う(例:5万円)。
マネジメントインセンティブ(変動):
担当チームの生産性が目標を上回った場合、またはチームの離職が
ゼロだった場合に、四半期ごとに利益を分配する。
「部下を勝たせれば、自分も潤う」という構造を物理的に作ります。
② 「最低保証手取り額」の再設計
給与テーブルを作る際、
「各階層のリーダーの月額支給額は、その下の階層の
最大残業時の給与を必ず〇%上回る」というルールを
コード(規定)として組み込みます。
具体的には、リーダーの基本給+役割給を、
部下が45時間残業した場合の総支給額よりも高く設定します。
もし下回る場合は、一時金として補填する。
この「逆転させない」という社長の決意が、組織の信頼を支えます。
③ ライフステージに合わせた「選択制リーダー制度」
全員を一律に管理職へと押し上げる時代は終わりました。
マネジメントコース: 組織運営と育成を担い、高い報酬を目指す。
スペシャリストコース: 現場技術を極め、後進に技を伝えるが、
部下の管理責任は負わない。
このように「給与の上がり方」を複数用意することで、
「管理職は嫌だが、技術は磨きたい」
という優秀な層の離職を防ぎます。
4.診断:
あなたの会社のリーダーは「限界」を迎えていませんか?
以下のチェックリストを確認してください。
3つ以上当てはまる場合、あなたの会社のリーダーは、
今日にでも「退職届」を出す準備をしているかもしれません。
□ 給与の逆転:
リーダーよりも、残業の多い若手の方が手取りが多い月がある。
□ 教育のサービス残業化:
リーダーが一番忙しく、部下の指導を「休憩時間」や
「定時後」に行っている。
□責任の丸投げ:
現場のトラブルの責任はリーダーが取るが、
改善のための予算や人事権(評価権)が彼らにない。
□ 経営者意識の押し付け:
「社長と同じ目線で考えろ」と言いながら、経営数字を
一切開示していない。
□ロールモデルの不在:
若手社員が「あのリーダーみたいになりたい」ではなく
「あんなに大変そうなら、昇進したくない」と言っている。
結論:
給与設計は「社長の覚悟」の表明である
30名の壁とは、言い換えれば「社長のコピーロボット」
では通用しなくなる壁です。
ここを突破するには、社長の代わりに現場を守り、
人を育てる「自律型リーダー」の存在が不可欠です。
しかし、彼らに「志」や「やりがい」を求めるだけで、
報酬を後回しにするのは、2026年の経営としては失格です。
評価制度と給与設計を刷新することは、
単なる経理上の作業ではありません。
「わが社は、責任を負い、組織に貢献する人間を、絶対に損な目に遭わせない」
という、社長から社員への最も力強い約束なのです。
「どうやって給与原資を作ればいいのか?」
「具体的な評価項目はどう書けばいいのか?」
その悩みは、あなたが組織を一段上のステージへ
引き上げようとしている証拠です。
もし、今の給与テーブルに不安を感じたり、
リーダーの顔に疲れが見えるなら、一度立ち止まって
「仕組み」を見直してみませんか。
リーダーが「罰ゲーム」から解放され、笑顔で部下を
導くようになったとき、30名の壁は自然と消え去り、
あなたの会社は次の50名、100名という
成長軌道に乗るはずです。
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