
「若いうちは苦労をしろ」「一人前になるには10年はかかる」
こうした言葉は、これまで多くの職場で当たり前のように使われてきました。
実際に、その時間をかけて技術を磨き、失敗を重ね、
人間関係を学びながら成長してきた経営者・先輩方は少なくありません。
だからこそ、その言葉には「楽な道ではないけれど、必ず力になる」
という実体験に裏打ちされた重みがあります。
教える側は「一生モノの技術を授けたい」と願い、
教わる側は「10年も足止めされるのか」
と不安になる。
この「世代間のズレ」を考えるとき、
私はある有名な寓話を思い出します。
3人の石切り職人の話

旅人が、道端で石を削っている3人の職人に
「何をしているのか?」と尋ねました。
1人目はこう答えました。
「親方に言われたから、10年も石を運んでいるんだ。なんて退屈な仕事なんだろう(苦役)」
2人目はこう答えました。
「家族を養うために、10年この仕事をしているよ。生活のためさ(生活の糧)」
3人目は、目を輝かせてこう答えました。
「10年かけて、後世に残るような立派な大聖堂を造っているんだ!(使命)」
「10年」の意味を決めるのは、ビジョン
1人目と3人目は、実は「全く同じ作業」をしています。
それなのに、一人は「足止め」と感じ、
もう一人は「夢の途中」だと感じている。
この差はどこから来るのでしょうか。
それは、「今やっていることが、未来の何に繋がっているか」というビジョンを
共有できているかどうかだと思うのです。
「10年修行しろ」という言葉が、もし「10年黙って石を運べ」
としか伝わっていないとしたら、それは私たち教える側の
言葉足らずかもしれません。
現代の「職人道」をデザインする
今の時代、ただ背中を見て覚えろというのは酷な話です。
今の若い世代は、情報も選択肢も多い環境で育っています。
成功事例も、転職も、キャリアの分岐点も、
可視化された世界で生きています。
だからこそ、努力そのものを嫌っているわけではなく、
「この努力は、どこにつながるのか」「いつ、どんな形で成長できるのか」
が見えない状態に、強い不安を感じるのです。
「何年耐えればいいのか分からない修行」よりも、
「今はここを身につける時期」「次はこの役割を任せてもらえる」
そんな成長の道筋が見える環境を求めるのは、
ごく自然なことと言えるでしょう。
だからこそ、弊社ではデジタルツールを活用した勤怠管理や、現場の声を
直接拾える仕組みを取り入れています。
自分の頑張りが正当に記録される。
小さな手当や日々の努力が可視化される。
こうした「今の頑張りの見える化」は、自分が今、
大聖堂のどの部分の石を積んでいるのかを確認する作業でもあります。
「10年」を足止めにするか、
それとも「一生揺るがない土台を作る時間」にするか。
私たちは、次世代の若手たちが「自分は大聖堂を造っているんだ」
と胸を張って言えるような、
そんな環境をこれからも整えていきたいと考えています。
一方で、経営者や先輩世代が伝えたい本音は、決して冷たいものではありません。
「基礎を疎かにしないでほしい」「簡単に身につく仕事ではない」
「途中で投げ出せば、結局本人が損をする」
そんな、むしろ誠実で責任感のある想いが込められているはずです。
問題は“想い”ではなく、“伝わり方”です。
これからの時代に必要なのは、
「10年かかる仕事です」と一言で伝えることではなく、
「1年目で身につくこと」「3年後に任せたい役割」
「どんな経験を積めば評価につながるのか」
といった成長のステップを、言葉や仕組みとして示してあげることです。
修行そのものを否定する必要はありません。
むしろ、時間をかけて積み上げる価値がある仕事だからこそ、
「今どこを登っているのか」が分かる設計が求められています。
見えない修行から、見える成長へ
この転換ができるかどうかが、
「選ばれる企業」と「人が定着しない企業」を分ける、
大きな分岐点になります。
世代間のズレは、価値観の対立ではありません。
人の問題でもなく、若者気質の問題でもありません。
多くの場合、それは“仕組みと設計”の問題です。
伝え方と構造を少し整えるだけで、同じ想いでも、
驚くほど伝わり方は変わります。
「最近の若者は…」と感じたときこそ、
実は、企業側が次の成長ステージへ進むための構造を
見直すチャンスなのかもしれません。
そして、この「見える成長」を実現するために欠かせないのが、
感覚や根性論ではなく、仕組みとしての設計です。
「どんな行動が評価につながるのか」
「どこまでできれば次のステップに進めるのか」
「成長と給与が、どう連動しているのか」
これらを言葉だけで伝え続けるのは、限界があります。
だからこそ、成長のプロセスと評価基準を整理し、
誰が見ても分かる形に落とし込む必要があります。
給与設計Proは、社員の成長段階と役割、評価、給与を一体で整理し、
「なぜこの給与なのか」「次に目指す姿は何か」
を可視化するための仕組みです。
また、マイジョブは、日々の業務や現場での積み重ねを“見える成果”
として残し、頑張りが正しく評価につながる環境づくりを支えます。
修行を否定するのではなく、
修行が「未来につながっている」と実感できる職場へ。
見えない我慢ではなく、見える成長と納得できる評価を。
その積み重ねこそが、これからの時代に「選ばれ続ける企業」を
つくっていくのではないでしょうか。
「あなたの会社の大聖堂、設計図は社員さんに見えていますか?」
