
はじめに
「2025年の最低賃金が全国的に大幅アップする見通し」という
報道を目にした方も多いでしょう。
一方で、
「本当に労働者の生活が守られるのか」「企業はどう乗り切るのか」
という疑問も多くあります。
物価の上昇や人手不足が続くなかで、今回の改定は働く人の生活を守る一方、
企業経営にとっても大きな転換点となります。
今回は、2025年の最低賃金改定の内容とその背景、
そして企業がいまできる具体的な備えについて整理してみましょう。
2025年の最低賃金動向:
何が変わるか厚生労働省は、令和7年度(2025年度)における
地域別最低賃金改定額を取りまとめ、各都道府県で多数答申がなされました。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63030.html?utm_source=chatgpt.com
全国加重平均額は1,121円(改定前より66円アップ)とされており、
今回の引き上げ幅は過去最大級になります。
都道府県ごとには、63円~82円の引き上げ幅が見込まれており、
最低賃金額は1,023円~1,226円のレンジに。
たとえば東京都は1,226円、大阪府は1,177円とされています。
発効時期は、10月1日~翌年3月31日までの間に順次。
都道府県ごとに異なります。
なぜ“今”引き上げるのか:背景要因主な背景には次の4点があります。
物価上昇と生活費の圧迫
エネルギー価格や原材料費の高騰が続き、実質賃金が下がっていることへの調整。
慢性的な人手不足
低賃金では人材が確保できず、採用競争の中で賃金底上げが避けられない状況。
格差是正・所得再配分の政策的狙い
働く人の生活安定と、地域間の賃金格差を縮める目的。
政治・社会的な注目度の高さ最低賃金の引き上げは
「賃上げ実感」の象徴として重視されています。
■ 引き上げで得をする人、影響を受ける企業
プラスの側面
・低賃金層の生活改善
・消費拡大による地域経済の活性化
・賃金全体の底上げにつながる可能性
一方で、企業側には次のような課題も生じます。
・人件費増加による利益圧迫
・採用・シフト調整などの雇用リスク
・価格転嫁の難しさ
・地域・業種間の競争力格差の拡大
特に中小・小規模企業にとっては、「どうやって乗り切るか」
が現実的な経営課題となります。
■ 企業が“今”からできる備え
最低賃金引き上げへの対応は、「単なる賃上げ」ではなく、
賃金設計そのものの見直しがポイントです。
生産性の向上・業務効率化まずは現場の作業を見直し、
少人数でも成果を上げられる体制づくりを。
賃金体系の再設計給与設計の観点では、
「役割・能力・成果」に応じた公平な評価基準を整えることが重要です。
すべての従業員を一律に上げるのではなく、バランスを保つことが
持続可能な賃金運用につながります。
補助金・助成金の活用厚労省や自治体が用意する
「業務改善助成金」などを活用し、環境整備費用を一部カバーできます。
従業員との対話「なぜ賃金をこうするのか」を丁寧に説明し、
納得感のある制度運用を心がけましょう。
■ 月給制の社員も“時給換算”でチェックを
「うちは月給制だから関係ない」と思われがちですが、
最低賃金は時給換算での比較が必要です。
通勤手当や一部手当は最低賃金の対象外となるため、注意が必要です。
就業規則や労働条件通知書の見直しも、このタイミングで行っておくと安心です。
■ まとめ:
賃金設計の見直しは企業のチャンスに
2025年の最低賃金改定は、全国平均で1,121円(+66円)という
前例のない上昇となります。
働く人にとっては生活安定の追い風ですが、企業には人件費増という
大きな課題がのしかかります。
しかし、この「制度改定の波」は、企業が自社の賃金設計や評価制度を
見直す好機でもあります。
短期的なコストではなく、長期的な組織づくりの投資と捉えることで、
持続的な成長につながる新たな道筋が見えてくるはずです。
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